さみしいお話

ボラボラ島。
世界で一番きれいだといわれるタヒチの島。

旦那さんのゴッドファーザーがいつも口にしていた島です。

お墓はいらない。
最後は家も何もいらない。
船に乗ってボラボラ島まで行ってそこで死にたい。

両親に何かあって子供が一人になってしまった時に親代わりになってくれる人をゴッドペアレンツといいます。
スウェーデン人全員にゴッドペアレンツがいるわけではないそうですが。

旦那さんは3人姉弟ですが、一人ひとりに別のゴッドペアレンツがいます。
旦那さんも親戚の子のゴッドファーザーでもあります。

このシステムがどれくらい活かされているのかわかりません。
形だけなのか、もし何かあったら引き取るのか、どれくらいの頻度で会う関係なのか。

私が聞く限りではゴッドペアレンツになっている人は親友だったり仲のいい身内だったり信頼を受けている人です。
そしてその信頼に応えて責任をもって引き受けているようです。
普段は何もしません。
クリスマスにプレゼントを渡したりするぐらいです。

うちの旦那さんとゴッドファーザーは仲がよく、一緒に働いたりしたこともあったようです。

旦那さんの叔母さんのパートナーだったゴッドファーザー。
ストックホルムでバイクギャングだったゴッドファーザーと真面目な叔母さんがどうやって知り合って一緒になったのか全くわかりません。
叔母さんと別れてからも近所に住んでいるのでヨハンセン家とは交流がずっとありました。
叔母さんも一緒に誕生日をお祝いしたり、仲よくしていました。

面白くて優しい、私はそんなゴッドファーザーとしか会ったことがありません。

叔母さんと別れた原因になったアルコール依存症。

旦那さんが日本に居た時も、寒くなると鬱になって飲み始めてしまううから心配だとマメにskypeしていました。

年がら年中飲み続ける常習タイプの依存症ではなく、飲まない時は数週間、数か月飲まないでも平気な周期タイプの依存症。
飲んでいない時は普通です。陽気でサッカーが好きで愛犬と散歩にでたり。いたって普通。
一度飲み始めると2~3週間ほど飲みっぱなしです。

夜遅くのゴッドファーザーからの電話には旦那さんはでません。
翌日に様子を見に行きます。
私も行こうかと聞くと、飲んでいる姿は見られたくないと思うから、と一人で出かけていきます。

ゴッドファーザーの娘さんとうちの旦那さんは子供のころからずっと仲良し。
ゴッドファーザーと連絡が取れないと少し離れたところに住んでいる娘さんからうちの旦那さんに連絡が来ます。
心配だから見に行ってほしいという連絡です。
連絡が来たら旦那さんが様子を見に行きます。

みんながゴッドファーザーを心配して、支えようとして、努力もして、あきらめもして、もう何年も何年も。

身内が一人で背負いきれるものではないと思います。
人に頼ると助かる時もありますが頼るのが当たり前になってしまうこともあります。
協力なのか、依存なのか、私には難しくてわかりません。

旦那さんは愚痴も文句もほとんど云いません。
何かの時に、人のためにしか生きてきてないから、といったようなことを云ったのを聞いたことがあります。
多分、こんな状況がずっと続いているのが日常だからかもしれません。

春が来て温かくなったのに、何度も飲み始めて家から出れない状況が続いたこの春夏。

島の端っこの小さな村に住んでいる私たち。
島には警察も病院もありません。

何かあったらまずは一番近い消防車が現場に向かいます。
同時に島のヘルスケアセンターから救急車が向かいます。
必要なら本土から警察が向かいます。

小さな村ばかりなのでほとんどが誰かの知り合いです。
消防車が走るとみんなが向かう方角には誰がいるか考えます。
今日危険な機械を使う予定の人はいたか、重い病気の人はいたか、色々考えます。

救急車が向かう速度で大変なことがあったことを知ります。
心当たりがあったらお互いメールを送りあって無事を確認したりします。
電話で連絡を取るのが難しい人の場合は直接確認に行きます。

救急車がすごい勢いで戻る場合は無事を祈ることができます。
サイレンを鳴らさずに戻るのは手遅れだったということ。

道は一本しかないので全ての動向がわかります。

警察が島の南にくることはほとんどありません。
呼ばれないと来ないので、来るということは大変なことがあったということです。

アルコール依存症の人の突然死はよくあるそうです。
ゴッドファーザーは連続飲酒中の心臓発作のようです。

連絡が取れなくて、いつものようにゴッドファーザーの娘さんから連絡が来て、救急車が走っていく音が聞こえて、旦那さんは車をとばして様子を見に行きました。

家の前には救急車。
身内です、と云っても救急隊員からは何が起きたか教えてもらえなかったそうです。
ゴッドファーザーのお父さんが居たのでやっと様子を聞くことができ、中にも入ることができたそうです。

その後救急隊員から旦那さんが聞いたところ、1台の救急車につき毎月1件は、ゴッドファーザーと全く同じ状況で救急車が呼ばれているそうです。
エーランド南部とカルマルに何台の救急車があるのかわかりませんが、そんなにあるのかと驚きました。

実際に何人もの人がゴッドファーザーの元パートナーの叔母さんにお悔やみを云うときに、「うちの弟も」「うちの叔父さんも」「うちのお祖父さんもアルコール依存症だったんだよ」という話をするそうです。

少し前の出来事ですが、やるせないだけで、気持ちの整理はつきません。
私でそうなのだから、うちの旦那さんはもっとだと思います。

起きるたびに目のまわりがクマで真っ黒の旦那さんを見ると悲しくなります。
ゴッドファーザーの家の片づけや色々なことを手伝って帰ってきた時も、目の周りがクマで真っ黒です。

時々急に思い出して涙がでそうにもなります。
でも実感がわかなくて、まだゴッドファーザーが愛犬を連れてニコニコしながら遊びに来る気がするから、私が悲しいのは旦那さんが悲しいからなのかもしれません。

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さみしいお話” への2件のフィードバック

  1. Kondolerer (-_-)
    わたしたちも山の上をドクターヘリが飛んでいくと、行き先が相方の実家の方角でないかどうか真っ先に確かめます。旦那さん、早く元気になるといいですね。

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    1. 月兎耳さん
      ありがとうございます。
      スウェーデン語ではkondoleanserのようです。覚えておこう。英語も似てるんですね。使ったことなかったので知らなかったです。
      山の人はドクターヘリなんですね。確認作業、よくわかります。毎回祈る思いですよね。
      旦那さんは気づくと目のまわりがクマで真っ黒になっているので、キムチチゲやワサビたっぷり丼などを食べさせてカラいイもので思考を麻痺させています(効くのかは不明)。

      いいね

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